フッと
メチャクチャなルールの
「席替え」を思い出した
小学校4年生の時
僕のクラスは38人
机の並べ方は
男女の机が1組ごとに
くっついてペアになっている
女担任がこう言った
「男は黒板前に並んで、女子は後ろに並びなさい」
これから、何が起こるのか?
察する人は鋭い
そう。
この時に大人の間で流行っていた
「ネルトン」をやらされるわけ
男が女の子を選ぶ
女が男の子を選ぶ
これを交互に毎学期
でも普通のネルトンと違って
ちょっとルールが
アレンジされている
・完全先着順で競合は出来ない
・選ばれた人は断ることが出来ない
さて、これを田舎の小学生がやると
どうなるのか?
席替え前の
打ち合わせが当たり前になって
みんな自分の心が
傷つかないように
何よりも自分を守ろうとする
それは選ばれない事と
選びたくない事態を避けるためだ
クラス内の仲良しグループは
全てが
男女偶数なわけじゃないし
グループ間のトレード
駆け引きもあったりする
完全先着順だけど
取り決めを破ることは出来ない
席替えは
その一瞬だけで
終わるわけじゃないから
裏切りが起こらない
この辺がまだ可愛いところなのか
そして
僕のクラスでこれをやると
10人近く
5組の男女の椅子が決まらない
そう、何をどうやっても
最後まで相手を選べない
選ばれない
椅子が決まらないと
その日は一日中正座させられる
次の日も
廊下に立たされる
女担任が制定した
「相手を選べないから」
「自分の椅子を決められない意思のない子供」
という法があるからなわけで
この席替えは
そのまま、3回目まで続いた。
1回目は男から女の子に
2回目は女の子から男に
僕は小学生時代
全ての期間で学級委員だった
この陰湿な出来事を
辞めさせる事が出来ないことに
自分の無力さにがっかりした
今でも全ての出来事を
鮮明に思い出せる
担当教師に掛け合って
嘆願書を書いて提出した事も
最後は目をつぶって
自分の意見を曲げたことも
努力は行動が伴って
結果に影響を与えて初めて意味を持つ
願うだけでは
何も変わらないし誰も助けられない
これは年齢とは関係ない
3回目の席替えで
男から女の子を選ぶ時
僕は何の打ち合わせも無く
ほとんどの人の考えを裏切った
一番初めに
いつも最後まで選ばれない
自分から選ぶこともしない
1番人気のない女子に
手を差し出した
僕の隣に座ってくれますか?
これが、最後の席替えになった。
彼女は何も悪くない
僕も何も悪くない
でもクラス内では極悪人扱いだ
僕は脱法者になった
この時、はじめて全ての席が決まった。
手を前に出した時から
すべての椅子が決まるまで
僕が選んだ彼女は
終始無表情だった
この時の選択が
正しかったのか
間違っていたのか
結局は僕も
自分にとっての正義を
勝手に信じているだけで
相手の気持ちまで
助けている訳じゃないことに気付く
それは
彼女に対しても女担任に対しても
言えることなんだから
まあ、それはいいとして
ここで終わらないのが
この女担任の只者ではないところ・・
この席替えの数日後
4年生最後の
学級委員の投票選挙が始まった
僕は席替えの時はもちろん
根回し、取り決めをしたことは
一度もない
この時、
対抗馬にKくんが立候補した
Kくんは
日頃から一緒に遊ぶ友達だ
僕はびっくりした
何も、誰からもそんな話しは
聞いてなかったんだから
Kくんは女担任のお気に入り
スポーツ万能の学年の人気者だ
あの時の
周りのみんなが僕を見る目
本当に
忘れられずに覚えてる
何かを知って
秘密を共有している目
投票は無記名投票
配られた白紙に名前を書いて
黒板前の箱に入れて
一枚づつ開いて
黒板に「正」の文字を書いていく
結果は4票差で僕が当選した。
みんなが下校した後
対抗馬のグループが投票用紙を
開いて並べていた
そう。筆跡鑑定。
今思えばすごい施設だな本当に
その努力、違うものに向けたら
なかなかだと思うんだけど・・
それから、もうひとつ。
懐かしい「芋掘り遠足」
みんなで掘ってきた
さつまいもを焼き芋にしよう
という事になった。
これは、6年生の時
枯葉を集めて
校庭に大きな山のように積んで
6年生の担任達が数名で
火を付けた
火を付けた時
生徒のみんなは授業時間中だったけど
僕と副委員長の2人だけ
校庭に残されて手伝いをすることになった
火は燃え広がらない
当たり前だよ
酸素が無いんだから
外から内側に燃える訳がない
でも言えない。
言える訳がない。
僕の小学校は
負傷者続出の組体操が毎年あって
毎日の合唱も強制
声が小さいとビンタされる
何かの施設みたいな環境なんだから
この担任達
燃えないなあ?と相談しながら
一斗缶を持ってきた
まさか。灯油をかけるのか?
と思ったら中身はガソリンだった。
この時の担当教師達は
笑いながら楽しそうだった
一斗缶まで
火の手が回ってきて危なかったのに
バカだ。本物の
ここで終わらないから
ただのバカじゃないんだよなー
この黄金色とは程遠い
なんか変な色のガソリン芋は
その日の給食に並んだ
ものすごい匂い
全身が全力で
この変な食べ物を受け付けない
僕のクラスは
給食を少しでも残したら
昼休み無し
約30分間の昼休みの間
給食のトレーを
片付けることも許されない
ぼくは必死の思いで
焼き芋を
飲み込んだ
その時、隣の女の子は
ずっとトレーを見つめたまま
罰として
その後の掃除の時間中も
教室の真ん中に
1人だけ机を置いたままにされて
見せしめにされた
あの時はこの複雑な思いを
言葉に出来なかった
あの頃は学校の帰り道
石焼き芋のトラックを見る度に
ワクワクしてたのに
今じゃ苦手な食べ物の代表格
ガソリンのせいなのか
撒いたやつのせいなのか
僕のせいなのか
彼女のせいなのか
結局よくわからないままだ
こういった事件をきっかけにして
僕はこの歪んだ
施設のループを抜け出す
方法を考えることにした
どうしても
理不尽な強制を受け入れることに
耐えられない
自分の力で行きていこうと
その後の僕は
行くはずだった進学校ではなく
地元の公立中学校に通うことにした
何故かというと
小学6年生の時
あることに気が付いた
「施設から抜け出す方法」を
思い付いたからだ
パチンコとスロットの
あらゆるプログラムを
雑誌のデータ等を参考にして
PC9801Mという中古パソコンで
シュミレートした
この時代の言語はベーシック
OSは一人で千葉パルコにあった
ラオックスという電気店まで
「MS-DOS」を買いに行った
この時に一緒に買った
ゲームソフトは
「天下統一」と「ティル・ナ・ノーグ」
結構ハマったなー
いくつかの必勝法を確立して
恐る恐る実践したら
毎月、数十万円くらいの
確実な期待利益を得られるようになった
やり方は簡単で
徹底的にデータ分析をして
計算尽くで台を探して
普通に打つだけなんだから
違法性はない
他にもこんなことに気が付いた
台の傾き調整が雑だったり
台を量産するための
プラスチックプレス機
クギを打ち込む機械の性能が安定していない
要するに
パッと見は全て同じ台でも
出荷段階で僅かな個体差があることに
すぐに気が付いた
1台1台のパチンコ台には
全て個性がある様に感じた
毎日やっていると
全ての台の個性が手に取る様にわかる
球の流れを見て
頭の中で計算するだけで
その時給がわかるわけだ
生活するためのお金の稼ぎ方は
これで何とかメドが立った
やり方は褒められなくても
なんとか施設のループから
抜け出す方法を思い付いたわけだ
この時に
いつもドキドキしたことがある
パチンコ球を借りる為に
お札を使う事が出来ない時代
100円玉か500円玉を
一枚、一枚、手動で
パチンコの球に交換しなければいけない
このお金を入れるところに
小さな注意書きがある
「プロの方お断り」
ここに中学1年生の
パチプロが誕生したわけだ
見た目もマセていたから
ギリギリ高校生くらいには
見えていたと思う
お決まりの服装は
鶯色のコーデュロイシャツに
黒のロングコート
老けて見えるように
髭はずっと伸ばしたまま
わざと不潔そうにした
タバコはいつも50発で交換する
セブンスター
もちろん中学校には
普通に通っているから
放課後から
閉店までが稼働時間
打った機種も
立ち回った店も
台の釘も設定も
店員の顔も
煙草の交換率も
来ていた服も常連の顔も
すべて鮮明に覚えている
カーニバル
ダブルゲーム
ラプソディ
スーパーコンビ
釘と打ち方の影響が大きい
台が狙い目だった
エリザベス
ダイナマイト
63ホール
エイト
ドラゴン
マルサン
南国パール
ロッキー
今は一つも残っていないお店
勝ち過ぎて
目立たないように収支を
コントロールするくらい
ずっと順調だった
あれだけ毎日
いろんな店に通ってたのに
店員さんに止められたことも
教師に会うことも
全く無かった
地元で一番人気の
チェーン店「ともえ」「ヒノマル」には
近寄らないと決めていた
いろいろ順調だったけど
ひとつだけ
大きな失敗をした
いつも
髪の毛を切りに行っていた
家族経営の
オダカという理容店で
このチョビ髭は
剃らないの?って
顔馴染みのお母さんに
ずっと髭を馬鹿にされ続けたこと
いつもこの時には
何も言えなかった
本当にその通りだったし
カミソリ持った
おばさん怒らせたら大変だからね
それでも
オダカを頼って通い続けて
馬鹿にされ続けた
だって他の店に行ったら
勝手に髭を剃られて
必ずスポーツ刈りっていう
角刈りにされるんだから
何かに頼るってそういうことだ
ここで
偉人みたいな髭に憧れている
とか言えたら
大物になっていたかもなあ
http://www.artmuseum.jpn.org/mu_bansyou.html
タイトル画像「晩鐘」