今回は
ビリヤード場経営での出来事から6年後。
ここtrenteでの実話からのお話し!
あの子がSTAFFとして
入ったのは20歳だったかな
店舗の責任者から
ここで働きたいっていう女の子が
いるんだけど。と声を掛けられた
その時は責任者の代わりにぼくが彼女の
面接判断をする事になった
彼が声を掛けてくるのも珍しい
なにかあるんだろう。
会ってみると一目で分かる
感情に素直で活発
好奇心が強そうだがその反対の判断をする
知性も備えている
ご両親の教えもあるだろう。
この年齢で大したものだ
彼女のスコアは円形でパーフェクト
ただ一点、
好奇心が際立っていることが心配だ
この業界、
初期衝動の好奇心は悲しみに繋がる
それを乗り越えられるか。
というところか…
当然即採用したいところなんだが
ぼくは責任者にこう告げた
『彼女はきっとここで泣く事になる。知らなくて済むような人の汚いところも沢山見る事になるだろう。もう一度ご両親とよく相談して、それでも良いというならば再度連絡をください。と伝えよう。もちろんお願いはしたいんだが一旦は保留だね』
責任者は上手く口に出せなかったが
こういう事を感じたんだろう。
後日、
店舗の責任者から連絡が来た
『こないだの子、採用するけど。』
『OK』
彼女の感じは見ての通り
ただし好奇心に溢れすぎているから
店長が責任を持って恥ずかしくないよう
見守ってあげてくれ。と伝えた
責任者は
『わかった。出来る限りは尽くす』
とすこし神妙に返答して来た。
それから1ヶ月後くらいか
なんとなくお店に立ち寄り
その後の彼女はどうかとフラッと覗きにいってみた
とても明るく元気であの時のままだ。
あ、先日の!
『楽しくできてる?』
と声を掛けたがとても明るく
『はい!』
という声がきけた。
うーん。
どうやってもうまく彼女に伝えられないが
ぼくには見えてしまうんだよなあ。
見たくない未来でも
彼女はこの場所で必ず悲しみに暮れることになる
まあ、触れる訳にもいかないので
見守らないといけないんだが
もうこれは始まったことで自分が判断したことだ
ぼくは責任者にこう伝えた
『彼女は近く必ずここでのトラブルに巻き込まれる。もしかしたらもう始まっている。その時は責任を持って彼女を見守ってあげよう。きっとご家族もそうやって彼女を見守って来たはずだ。もう経験する以外の道は無くなってしまった。ただ見守って、その経験を彼女の人生に活かせるようにしよう。ぼくらもお互いの人生に責任を持って接して来た。ここもそうしよう。』
あとひとつ
『いますぐに全体をもう一度把握して、その時に備えてあげてくれ、たぶん彼女は悲しみも人一倍だ。僕たちにとっても雇用してしまった以上は大きな責任がある。よろしく頼むよ』
責任者は
『もちろんだ。任せてくれ』
と固い握手を交わした。
彼なら彼女のことを助けてくれる。
確信をもって任せられる男だ
明るく元気な彼女に
店から出る別れ際
笑いながら声を掛けた
『前にも言ったけど。うらむなよー』
彼女はなーに言ってるんですかー
いまとっても楽しいです!
ハキハキと返事をしてみせた。
いまこれだけの信用があっても
集団から起こる原因への責任と言うのはぼくにある
その信用が強いほど裏切られたという感情も強い
積み上げるからこそ人は裏切らないのだ。
今回の件はまだ誰もわからないわけだが
その時はとっさに逃げ道をつくってしまった
意外とぼくはズルい奴だ。
それから2ヶ月後くらいか
彼女を大きく悲しませる出来事が起きた。
あるとき店に寄ると
責任者が近づいて来て
『じつは』
その表情で現状は把握した。
ぼくからは
『どんな感じ?』
と責任者に告げた。
その後の対応を聞いた
その件についていつも以上に
討論するぼくだったのか?
責任者が討論を終えてしばらくたってから
もう一度『じつは』と、
1枚の便箋をぼくに見せて来た。
『当事者に書かせたものだ』
自分との約束として
当事者に誰にも見せないと約束した。
本意ではないが先の経緯もあるので
オーナーには
あなたの判断で見るか決めてくれ。と
こういう対応はぼくには出来ない
だから彼に、
この責任者に全権を任せている。
バックアップに対してとても真剣だ
そういった中で大切なことを教えていく
これが店舗経営の責任だ
責任者に深く頭を下げて謝った
これがはじめての経験だったかも知れない
『すまない。』
責任者は
『お互いさまだ』
これからもがんばろう
お互いの進むべき道を進もう
と固い握手を交わした。
相変わらず責任者はいいやつだ。
お店の運営は変わらない
ただし、運営するぼくらは
変わらなければいけない。
責任者は責任を持ってこの対応をやり遂げた。
『わかった』
彼女への対応は僕に任せてくれ。
『よろしく』
責任者と目を合わせて固い握手をかわした。
次は僕の番だ。
さっそく勤務中の彼女に会いにいった
『ひさしぶり。最近どうだい?』
ぼくはいつものような感じで
へらっと笑顔で声を掛けた。
彼女はなんだか涙ぐみそうだ
ぼくは目を合わせず、精一杯の自信を込めた言葉で
『きみは大丈夫。』と声を掛けた
彼女はいつもの元気で活発な声を塞いで
涙も堪えているようだ
『はい』と言った。
そのときにどこを向いていたのかは
わからないが
きっと彼女も目は合わせなかっただろう。
『まだつづけるのかい?』
とも聞いてみた。
すると彼女は目線をあわせて
『自分で決めた事ですから』
とぼくに言った。
大きく開いた目は赤くなり
大粒の涙もまぶたでこらえて
その目線はまっすぐだ
彼女は
きっとどんな未来へも自分の力で
力強く進んでいく事だろう。
『泣くときは静かなんだね。』
とかふざけてみたら
思いっきり叩かれた。あたりまえか
彼女はまだ大学生だ。
責任者に笑顔で伝えた
『あとはたのむよ』
『わかった』
笑顔でさっき以上の固い握手を交わした。
それからしばらく経って
責任者から
従業員に欠員が出たので誰かいないかな?
という相談があったので
週に一日か二日ならしばらくは
ぼくが店頭に出るよ。と伝えた
うちのお店の開店時間は15時。
交代は19時か20時。
交代前の店番はその彼女だった
まあ大きくはない店だし
それからは彼女と日常会話も
するようになった。
ふざけた会話ばかりだが、
就職などで心配だという話しをきくと
声を掛けた。
『あ。きみは絶対に大丈夫。』
面接は気にしない方がいい
学歴がとか会話がとかではなく
相手が真剣であれば
きみを見た面接官は必ず採用する。
採用しないような会社は
むしろこちらから選ばない方がいい。
なんでかって?
そりゃそうだ。断る理由が無いんだから。
その後
彼女はすんなり大手企業に就職した
後から聞いた話しでは
面接開始の段階から彼女は役員面接へ
と、決まっていたらしい。
さすが成長著しい大手企業の人事担当だ
そりゃそうだ。
就職説明会の代表取締役スピーチで
本気で泣いてしまった。
とか笑っていっていたが
一時も目を離さず熱心に聞き入っていた
そんな姿が目に浮かぶようだ
成長企業の人事担当だって本気だ
そういう姿を見逃すことはない
その企業はいまや日本代表と言える企業だ
当然の結果だろう。
そして、
彼女はこのお店を卒業した。
それからもことあるごとに
彼女はお店に足を運んでくれた
まあ。実家は歩いて数分のところだ
社会人にもなり
いろいろな話しもきいた。
うん。順調なようだ。
責任ある相手に対して
それ以上の責任で応える
熱意ある相手に対して
それ以上の熱意で応える
ただ責任や熱意は
受け止める側によっては大きな負担になる
受け止める器だって
そんな簡単に用意があるわけじゃない。
どちらが上でもなく下でもなく
向き合ってくれる人はとても大切だ
目を逸らさなければ
それが必ずお互いの成長へ繋がるわけだから
(オチなし)
というtrenteでの実話からのお話しでした!