さて、今回は
ビリヤード場の変わった経営方法について
22歳になった時かな
ビリヤードを通して知り合った知人から
ビリヤード場の経営を。
と懇願された時のお話し
ビリヤード選手を目指していた店主は
丁寧にお断りさせていただいた。
19歳から初めたビリヤードの世界で
選手一本でやっていく
それしか考えてなかったので。
半年ほどの時が経ち
一番お世話になった
先輩からのどうしても。という懇願を聞き入れて
経営を引き受ける事にした。
さて、このお店。
前任の店長が従業員・お客さんを引き連れて
近隣で独立するという複雑な事情がある上
建物の所有者がかなりのビリヤード好きなんだけど
業界での嫌われ方が文句無しのナンバー1。
ぼくもとても苦手なプレイヤーだ
前任者の人気が圧倒的で
引き継ぎ開店時のお客さんはほぼ無し
さらに前任者は業界の先輩でもあると言う
非常に難しい状況だ
ぼくはこの懇願を受ける事で
今まで積み上げて来た
恩義人情に欠けたように見えることだろう
ただ、ぼく個人での恩義は通した結果なので
先輩からの懇願には即答で決断した。
確信があって悩んだときは
困難な道を選ぶということで、
このお店の経営をすることになったわけだが
まずやった事と言えば3つ。
とりあえずひとつめの方針決定。
前任者の笑顔溢れる
和気藹々としたムードではなく
完全なる競技志向へ
切磋琢磨のなかに
笑顔を求めるという戦略に出た
なぜなら営業する場所・街が同じ場合
客数という意味からでも期待値が望めず
愚策と言えるからだ
レベルを変えてしまえばいい。
もう1人の多少はお世話になった
独立する前任者への恩義も通したい。
全く異なる発想で望めば
お客さんの階層でも重なる事が無く
自分にとっても環境良好という内容で
スタートする事にした。
頼るものがないのは当然怖いが
それでは新しいものが生まれない
プレイヤーを増やす営業活動・経営というのは
潜在的に求めるべきだ
絶対に出来ると言う確信はあったので
未来のみを見ることに固く決めた
という事での、ふたつめ
限りなくビリヤード専門店に特化すること。
ビリヤードの道場化だ
自分への都合も有るので重視したいところだ
簡単なルール設定をまとめてみると
・飲み物は自動販売機、一部の食べ物は持ち込み可
・ゲーム中の食事は厳禁
・ゲーム中の他人との無駄話しは禁止
・携帯等をいじる行為は厳禁
・だらしのない座り方は即注意
・酒を飲んでのプレーお断り
・大きい声で会話するお客様はお断り
・構えに入ったプレイヤーの視界内で動くことは厳禁
・愚痴禁止
・礼に初まり礼に終わる事
・他人の悪口は即注意
・言い訳をする者などいないすべては自分の責任
・対戦相手のプレーは必ず見届ける事
・ゲーム間の合間以外での休憩は厳禁
・プレー中の相手へ不快と感じる行為は厳禁・即退店
・低俗な会話は厳禁・即退店
・お客様同士の入店・退店時の挨拶を原則化
・対戦を申し込まれたら断らない事
・サンダル等の履物は自ずと厳禁化
・階級別のトーナメントを月に3回常設
・トーナメント時の仲間のプレーは最後まで見届ける事
・トーナメント時のプレイヤーを呼ぶときは
立ち場がどうであれ『さん・選手』付けで呼ぶこと
・対戦スコアを全員に見えるように付ける事
・膨大なマイキュー置き場をつくり置き場所などに工夫
・店主は背もたれにもたれず座る
・服装へは常に気を遣い白いシャツに限定、紳士に
などなど。
最終的には
・プレー中の喫煙禁止
・足を組んで座ることを原則禁止
目指したのは一言で言うと
特化型のアマチュアプレイヤー選手化だ
休憩所にはありとあらゆる情報を揃えてある。
ただし、プレイを終えた後は
笑顔と笑いで満たしていった
こういう空気感で店内を満たして時に熱く
笑あり・涙ありという環境に
周囲のお店から見たら異様な光景に映ったことだろう
ただのビリヤード場に
ひとつの世界があるわけだ。
当時のビリヤード人気はそれなり
下降気味だったが
ライバルコンテンツも余り無い
初期段階からシステム面での自動リピートを
戦略に取り入れるべき
あの人がいるから。は最終手段だ
閉店後のプレイにもどこまでも付き合い
勿論年中無休
店主の僕は他店での試合時以外
すべて店頭にいて指導・対戦・練習という毎日
ぼくの練習するテーブルは
どこのどの店の台でも見た事が無いような
練習の跡を残して説得力を深めた
特に上級者同士はもちろん
クラスは下でも実力の拮抗したライバル同士
(ビリヤードは実力に応じてS/A/B/Cのクラス分けがある)
こういった試合には沢山のギャラリーがついた。
とくに店主の試合は尚更だ
お店の最高ランクでのオープン戦
月例会では威厳にかけても絶対に負けられない。
ぼくの負けは店の負け
仲間の負けを意味するからだ
その時の店主の技術レベルでは
試合を勝ち続ける事は出来ない。
ハンデ戦でも正々堂々と立ち向かっていき
負けたときにこそ
その自身の態度には細心の意識を求めた。
そんな中でも積極的に他店舗の有名プレイヤーに
声を掛けてオープン戦の時は沢山の参加を頂き
トーナメント自体の価値を高め
質の高い負けられない闘いを見せ続けた
最終的には
店主、店主と共に練習を続けた仲間の1人が
オープン戦での決勝戦を争うようになり
数十名でのトーナメント決勝戦は
数ヶ月間同じカードだ。
みんなが見たいカードを自分で勝ち取る既定路線だ
1回戦から決勝戦までの途中で
このふたりから1ゲーム奪取するだけで
客席からざわめきが沸き
あわや勝利となるリーチを掛けようものなら
息を飲む音さえ聞こえないくらいの緊張感だ
※ 試合のルールは⑨ボールのセットマッチ形式
S&A級5/B級4/C級3回というハンデキャップで
先に規定回数の⑨ボールを落とした方が勝利。
一球入魂
手を抜くなんてシーンは一切無い
いや抜けない。
一挙手一投足すべて見られているので
見本となるような振る舞いに徹した。
観客席からの鋭い眼差し
数十名の観客達の話し声などあるはずが無い。
常に真剣な眼差しだ
仮に1度でも自分に甘えてしまったら
このシステムは崩壊してしまうほど
上位プレイヤーへも同様
プレッシャーを付加していった。
ギリギリまで細部にも競技要素を追求した
・チョークの付け方・置き方
・相手との順番が変わるときの振る舞い
・次の自分の順番を待つ姿勢
・プレイに徹した服装
ここまでくると
特に応援するプレイヤー、店主などが
対他店舗所属選手との試合に負けた場合。
同行のプレーヤーは涙する者も多かった
負けられない負荷を自分にかけるのだ
言い訳って言うのは
その事実を見ていた人が大抵するものだが
それすらもほとんど無い。
ここまで意志共有出来たらもう言う必要がない
次への方策を考えることが1番だと
共有出来ているからだ
みんなそれぞれに
その時に出来る精一杯を尽くしている
特に初級者は重圧のなかでも
逃げずに自分に向き合っている
そこまで追い込んでこその特化だ
厳しい試合終了後はだいたいどこからか
ちょっとした笑いがおきて。
その一日の名シーンを笑いながら語り合う
閉店後の会食なども
それはそれは毎日のように盛り上がった。
なんとも変わったお店だった。
(自分で考えたスタイルなのに)
最後のみっつめ
お客様の帰宅時には姿が見えなくなるまで
1年間は毎日見送った。
たとえどんなに仲が良くなってもだ
高級店のサービスを低価格でやる。
サービスの対価は自分次第だ
わずか1年で
このビリヤード10台のお店は
15時の開店時〜閉店朝5時までの14時間
稼働率80%という数字を
記録する店舗になった。冬の2月だったかな
もちろんそんな店など他に無く
30%もあれば優良店だ
結果については
家庭事情があり中学生のときから
収入を得るために
もう少し難しい事業もしていたので
以外とすんなり受け止められた。
限定条件の
・自分の練習環境という願望を満たし
・先輩の懇願を果たし
・前任者・ビル所有者の顔を立てる
という条件下ではこのラインあたりで
経営については考えなくなった。
いま店主は
ダーツ屋を経営していますが方針は自由。
trenteでダーツをプレイする方に
他ジャンルの本物に触れて欲しい
これまでお世話になったお客様への感謝、これのみ。
とここまで。
ビリヤード場の経営についてのお話し①なんですが
これから約1年後。
たぶん誰の予想とも違う
予期せぬ閉店をむかえることになります。
つづく